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生きものこぼれ話 「新浜ビオトープ田んぼプロジェクト―稲刈り体験・生きもの観察会―」を開催しました!
投稿日:2024年11月11日(月)
初夏に田植えを体験した「カントリーパーク新浜」で、10月5日に稲刈りと生きもの観察を行いました。昔ながらの稲刈りとは? 意外な秋の実りも発見!?
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東日本大震災によって甚大な被害を受けた仙台市沿岸部に、人と自然が共存する里浜の再生を目指してつくられた「カントリーパーク新浜」。ここには田んぼ・水辺・砂地の3種のビオトープ(地域の野生の生きものが生きている場所)があります。
3つのビオトープ説明板
3つのうち田んぼのビオトープでは、除草剤や化学肥料を使わず、さまざまな生きものの力を借りた昔ながらの農法を通して環境を整えることを目指しています。今年5月にはここで田植えを体験し、その周囲で生きもの観察会を実施しました。
その時植えたのは、ミヤコガネという品種のもち米。そう、「はらこ飯」や栗やキノコたっぷりの「おこわ」など、秋の味覚には欠かせない食材のひとつですね。田植えから140日、イネは無事に育っているでしょうか。
田んぼの様子を見てみると……
BEFORE:田植え完了直後(令和6年5月)
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AFTER:コウベを垂れる黄金の穂波(令和6年10月)
この夏の酷暑にも負けず、しっかり育っていました!
今回は、この田んぼと周囲の湿地や水路、海岸林がフィールドです。
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はじめに、「カントリーパーク新浜」の遠藤源一郎さんによる開会宣言のあと、稲刈りの部講師の澤口義男さん(「カントリーパーク新浜代表」と瀬戸勲さん、生きもの観察の部講師の伊藤峻さんから、ご挨拶と、稲刈り・観察それぞれの部の概要を伺いました。
遠藤源一郎さん(左)、澤口義雄さん(右)
瀬戸勲さん(左)、伊藤峻さん(右)
■稲刈り体験■
- 鎌で稲を刈る
- 麻ひもで稲を束にまとめる
- まとめた稲束を天日干しするため棚に架ける
はじめに稲刈りの先生・瀬戸勲さん(新浜町内会顧問)が稲の刈り方のお手本を実演。続けて、瀬戸さん・澤口さんから、刈った稲の束ね方と、稲の束を天日干しするための稲架(はさが)けのやり方を教わりました。
手前にぐっと刈って
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束ねて結わえたら
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二又にして干す!これが稲架(はさが)け
それではいよいよ実践です。鎌と束ねひもを受け取って、田んぼに入ります。
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稲刈りスタート!
現代の収穫風景といえば、コンバインに乗って田んぼの中を進む図が一般的ですが、今日は鎌だけが頼り。思ったより大変ですが、みんな頑張っています。
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刈る人・束ねる人、家族で協力
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機動力抜群の姉弟!ファミリーの連携もお見事
この日は、刈った稲を麻ひもで束ねましたが、かつては刈った束から抜いた稲藁で束ねていたそうです。昔ながらの知恵には無駄がありませんね。ところで、こんな工夫をしている人も……。
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お父さんの麻ひもキープ術
束ねた稲は、天日干しをする棚まで運びます。鎌が使えない小さい子は、この稲架けの棚まで運ぶ係で大活躍していました。
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「ぼくだけがとおれるちかみち」
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集まってくる稲束
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遠くには泉ヶ岳、スズメ除けの凧が翻る
周りにはたくさんのトンボが飛んでいます。アキアカネでしょうか? 作業中の田んぼの中でもいろいろな生きものに出会いました。
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カニ発見!
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お母さんの帽子にアキアカネ
イネはこのように稲架(はさが)けして天日干しします。豊穣の秋の風景です。
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カントリーパーク新浜「稲刈り応援団」のみなさんのご協力を得てすべて刈取・稲架けされたイネ
■観察の部■
稲刈りのあとは観察の部。田んぼ脇水路で水辺の生きものなどを、田んぼの隣の湿地や東側の海岸林(マツ高木林)周辺で植物を中心に観察を行いました。水辺の生きもの系を伊藤峻さん、植物系をカントリーパーク新浜の遠藤源一郎さんにガイドしていただきました。
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水辺の生きもの観察では、観察を始める前に、安全な網の持ち方や捕獲のコツ、見つかりやすいスポットについてなどを教わりました。生きものを専攻する学生さんにもサポートしていただき、水辺の観察が初めての参加者さんも楽しく採集・観察ができたようです。
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「水路の底の隅っこを探してみよう」
この水路には、津波で被災・流失するも、絶滅の危機から復活した「井土メダカ(ミナミメダカ)」(※)がいます。
その他、お馴染みのアメリカザリガニ、ドジョウやカワエビ、カニ(モクズガニ?)、ハシリグモ(水上を走る!)、ゴミムシなどに出会えました。
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井土メダカとアメリカザリガニ
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指先にヌマエビ
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ドジョウと井土メダカ
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みんな大好きアメリカザリガニ(の幼体)
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子どももおとなも夢中
田植えの頃には田んぼにも水路にもオタマジャクシがたくさんいましたが、今回は田んぼ・あぜ道関係なく自由に跳ね回るカエル(アマガエル、トウキョウダルマガエルなど)をよく見かけました。
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さて、もう一方の植物観察は、遠藤さんによる「カントリーパーク新浜」を構成する3つのビオトープについてのお話から始まりました。
集合した田んぼの隣の湿地では、夏場はガマやヨシ、ショウブなどが一面に繁っていたのですが、今では写真のように枯れて倒れています。ここで何を観察するのでしょう?
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湿地のビオトープ
この湿地にはマコモという、筵(むしろ)などに使われるイネ科の植物も生えていました。
刈り取って下方の膨らんだ部分をむくと白くて大きな部位が出てきます。ここは新芽の部分で「マコモダケ」と呼ばれています。タケノコのような風味で中華料理などに使われ、生でも食べられるとのこと。実は秋が旬です。
こんなところにも豊穣の秋が隠れていたんですね。
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目の前でマコモダケを収穫(これは小さめ)
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ガマの穂、開いてみたらどうなるかな
続いて湿地から「カントリーパーク新浜」東側の海岸林(マツ高木林)に移動します。
東日本大震災以前、この林は海風や塩害から集落を守り、豊かな生態系の恵みをもたらすなど、地域の人々の暮らしを支えていた大切な存在でした。
津波で集落と周囲のほとんどの動植物が被災・流失するも、地域の人々を中心に「陸と海のつながり」と「生態系の保護・保全」を意識した復興まちづくりが進められ、生き延びた種の自律的な再生が促されたということです。今では、里浜の豊かな生態系を観察することができる貴重なエリアとなりました。
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海岸林の植物たちもすっかり秋の装いに
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コナラはどんぐりの実り時
セイタカアワダチソウの黄色や出始めたススキの穂など、初夏とはずいぶん趣の異なる秋の道です。路上にはコナラ等のどんぐりも落ちています。オニグルミも大きな実をつけていました。
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オニグルミは外皮を腐らせると見慣れた殻付きの「クルミの実」が出てくる
初夏の、命の息吹そのものの緑色の景色から一転、秋の風景は黄色や茶色、カーキ色など落ち着いたトーンに覆われていました。でも、このちょっと寂しげに見える景色のなかに豊かな実りの数々がありました。
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クロマツ中心の海岸林の中に、ツゲの木が生えている箇所があります。震災前のこの一帯には無かった種だそうで、津波で他所から流れ着き根付いたとのこと。そうした新しい命も受け入れて、常に進化しながら成長を続ける海岸林は、それ自体がひとつの生命体のようにも見えてきます。
早苗が黄金色の稲穂をつけ、オタマジャクシがカエルになり、ヤゴがトンボになってさらに命をつなごうとしている光景を目にして、あらためて四季があることの豊かさと恵みに感謝したくなりました。
また、ビオトープ田んぼでの体験を通して、私たちの暮らしもさまざまな生きものたちの営みと命の循環の力を借りていることを全身で感じた秋の日でした。
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この日の稲刈りや観察会の様子を90秒に凝縮したショートムービーをInstagramで公開しています。
併せてご覧ください。「フォロー&いいね!」もよろしくお願いします。
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https://www.instagram.com/reel/DA7b5B5ARUl/?igsh=MTA2djQxY2djYjdmeA==
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※井土メダカについて
本来は仙台市沿岸部の井土地区を中心に生息していた地域固有の遺伝子をもつ種でしたが、東日本大震災で被災・流失し、一時は絶滅の危機にひんしました。しかし、震災前に宮城教育大学が調査・保全のため同地区の野生メダカを採集していたことから、宮城教育大学・仙台市八木山動物公園・市民が連携し、以前の生息域での復活を目指す「メダカの里親プロジェクト」が進められました(現在は終了)。その一環として「カントリーパーク新浜」にもメダカのいるビオトープづくりが進められ、井土メダカを観察できるようになりました。
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